あるメキシカン カップルの話
今日は皆が浮き足立つ金曜日。仕事を終え、西向きのバス停で夕日を眺めバスを待つこと5分。定刻通りの7時50分、海のある、少し薄暗くなり始めた南の方向からいつものバスがやって来た。
毎日乗り合わせる顔なじみに、メキシコ人カップル(関連記事
)がいる。前回の記事以来3ヶ月が過ぎた。あれからというもの、私と彼らの距離は大分近づいた。初めは軽く挨拶を交わすようになり、そして、あるきっかけとなったのが、彼女といつも一緒の彼が乗り合わせなかった時の事。私のすぐ後ろに彼女が座り、普段と変わらず挨拶をし、そこから色々と話に花が咲いた。彼女の名前はジョアナ。近くの空港で働いている。年齢は未だ知らず、見た感じでは40代後半であろうか、彼の方が少し若く見える。そして不倫かな?と思っていた彼らの関係は、恋人同士。薬指の指輪は彼からのプレゼントだった。先にバスを降りていく彼、実はかなり大回りしていた。ジョアナと長い間一緒にいたくて、彼の家とは全く反対方向に30分ほど遠回りして毎日帰っていたのだ。大きな愛で包まれているジョアナ。しかし彼の方は結婚したがっているのに、なかなか彼女が煮え切らないらしい。年齢を気にして、と彼女は言う。私は、あの優しそうな彼と幸せになって欲しいな。
今日も帰りのバスの中、ジョアナと彼とまた一緒。
「ハーイ。やっと週末ね。疲れたわー。」
と、どちらとも無く私達は挨拶を交わした。彼が降りていってからは私が彼女の隣に座る。私のバス停までわず5分足らず、世間話を少しするのが最近の日課だ。お互いの彼の話、週末の予定などなど。そして別れ際、いつもの挨拶。
「良い日を!いいわね!」
と、ジョアナの威勢の良い元気な声を背中で受けながら、今日も私はいつのまにか暗くなったバスの外へと飛び出した。
6月11日 00:58
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常連さん
「あ!常連さん!」と、私。
「お!今日は早いなー。」と、フィアンセ。
朝、日課であるダラさん姉妹のお店(関連記事
)、「ゴールデン ドーナツ」の店先である。私達が到着した時にはすでに先客、カモのカップル、最近の常連さん。
グワグワグワグワ グワグワ グワグワ
(おなか空いた!ドーナツ!ドーナツ♪)
ダラさんはお店をお姉さんに任せ、心得た感じで1つの美味しそうなドーナツを手にし出てきた。砂糖がまぶしてあるだけのオーソドックスなドーナツ。それを小さく千切っては放ってやる。そこを通る人々が立ち止まってはその様子をにこやかに見つめている。「馴れてるわね。」「食べにやって来るの?すごいわねー。」と彼女に話しかけている。ダラさん、なんだか誇らしげだ。このカモのカップル、私達がいつも立ち寄る10時頃には、既に1日で2度目の訪問。朝食も、もちろんここのドーナツだ。
さあ、今度は私達の番。ダラさんのお姉さんにシナモンロールとハム&チーズ入りクロワッサン、そして入れたてのコーヒーを注文した。どうやらいつものオレンジ色のトレイが、今日から赤いバスケットに変わったようである。
「あのカモ達、ホントあなた達みたいね。」
ダラさんのお姉さんは外でドーナツをつつく2羽のカモを眺め、笑いながら私達にそう言った。同じ時間にやって来る私達、時には1人で、または1羽で。私はふと目の前のドーナツを見つめた。あのカモ達、彼らもダラさん姉妹の作ったこの美味しい美味しいドーナツを1日のエネルギーとし、同じ時間を過ごしているんだな。本当、私達と同じ。
6月9日 00:29
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ナプキンホルダー
ワンワン!ワンワン!
アーバインのいつものアンティーク会場に到着すると、元気のいいワンちゃんの声。どうやら彼女の行く先を歩く自分より大きな黒い犬に「遊んで!」と声をかけているらしい。しかし大きな犬はそ知らぬ顔、おしりをフリフリ遠ざかる。このちょっと寂しげな表情がかわいい。
先週、先々週と続いてフィアンセよりのイベントが続いての今週は、私の番。癒しのアンティークショー。今日は普段見かけないお店が数軒出現していた。その中でも一際目を引く星条旗のモチーフに溢れた赤いお店。多くの女性達がその前で足を止めていた。
私達は順番に1軒ずつゆっくりと探索。今日の目的は、15ドル前後でキッチンに置ける可愛い実用雑貨。
私はあるお店の前で立ち止まった。賑やかに色々な物が売られたそのお店の店先。暗い色のボトルやカップが並べられた中にぽつんとたたずむ、どっしりとカラフルな物。ブラックペッパーで有名なMcCORMICK社の、陶器で作られたナプキンホルダーだ。高さ15センチほどで、白・赤・青の3色、ペッパーの缶と同じデザイン。1974年の刻印がなされている。私は引き寄せられるようにそれを手に取った。フィアンセもそれを見て「かわいい」と言う。ではコンディションをじっくりと見てみよう。と、その前にお値段は、と底をひっくり返してみると18ドルのマークが。そうか・・・このぐらいはしちゃうのね。そう諦めようとしたその時、ある1点に目がいった。底に近い角が少し欠けているではないか。赤色が剥げた所に何やら赤ペンで上手い事ごまかしている。私はこっそりフィアンセに、
「ここ欠けてるね。色塗ってあるよ。」
そんなやり取りをしていた私達に店主がすかさず、
「見付けちゃったねー。見られたからには安くしてあげないと。いくらだったっけ?18ドルか、う~ん・・・。10ドル、これでどうだ!」
「こ、これ買います!」
ニコニコ即決の私、現金なもんである。店主も、
「ハッピーか?ハッピーだろー。君らがハッピーなら俺達もハッピー。」
やっぱりここは癒しの空間。行き交う人も犬達も皆ハッピーフェイス。あ、あのワンちゃん元気になったかな?
家に帰って、新聞紙に包まった幸せの欠片を取り出した。丁寧に丁寧に拭いてやると艶々と輝き出す。キッチンに飾りナプキンを入れてみれば、またそこが癒しの空間になった。
6月5日 16:52
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ラリー レーサー
先日も
「ハイ!アンドリュース。久しぶりだね。」
アフリカに1週間ほど行っていた彼の肌は、きれいに真っ黒に日に焼けていた。というのも彼、ラリーのプロドライバーなのだ。アフリカでレースに参加していた。
「わー、焼けたねー。ところでレースどうだった?」
そう聞く私に彼は眉毛を下げ
「マシーントラブルでさぁ・・・。」
でも、事故も無く無事に帰って来れたのが1番さ、と頑張る彼。私はニヤッと笑って
「なんだかんだ言って、面白くてしょうがないんでしょ、ラリーが。」
という私にアンドリュースは、「ハハハ!」と笑って私の肩をバシッと叩いた。アメリカを基盤に世界でレースをする彼、実はつい最近奥さんと離婚してしまった。2人の子供は彼が引き取ったそうだ。理由は聞いた事が無いが、奥さんからしたら心配でしょうがない職業なんだろうな、と勝手に思っている。
そして今、アンドリュースは会社を設立中。今の会社を辞め、レース用の車パーツを扱うお店を開くようだ。ヨーロッパや自分の国ギリシャに輸出入していくらしい。そしてお店には彼のラリーカーが展示される。それももうすぐの事。こうやって顔を会わせる事も無くなるだろう。そしたらフィアンセと2人で遊びに行く約束をしている。前に彼がこう言っていた。
「お互い母国が他にあって、アメリカで生活している。俺達の強みは英語プラス、母国語があると言う事だ。だからせっかくアメリカに居るんだから、母国と繋がった仕事をぜひするべきなんだよ。」
確かに、アメリカ人と違う事と言ったら日本人として、アメリカ以外にもう1ヶ国強力なコネが在ると言う事になる。それはすごい強みであって、それを生かさない手は無いのだ。フィアンセも同じ志の人。私達外国の人間が皆成功していく日を夢見て・・・。
6月4日 23:44
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カスタム カー ショー in パソ ロブレス
先週の土曜日、早朝4時過ぎ。フィアンセの運転するレンタカーの中に私はいた。ロスより車で約3時間半、家からは4時間の道のり。左手に海を臨み、右手には果てしなく広がるイチゴ畑やブドウ畑。そして行き着いた小さな町、PASO ROBLES 。
1年に1度、この日ばかりは30年代から50年代のアメリカのクラッシック カーが中心となり、1000台ものカスタム カーが町中を彩る。CRUISIN’ NATIONALS(クルージン ナショナルズ )と呼ばれる、カリフォルニアで最大級のカスタム カー ショーだ。フリーウェーを降り、この町に入った瞬間からそこはまるで戦後のアメリカの雰囲気。スペイン調の古い町並に、誇らしげに停められたクラッシック カー、そして町の住人の4倍もの車好き達。彼らの多くはリーゼントにジーンズ姿、まさしくジェームス・ディーンを彷彿とさせる。
「夢みたいやー!」
と、フィアンセは子供のようにはしゃいでいる。というのも彼、実は車バカ。この日はカメラ小僧と化していた。彼から目を離すとすぐに群集に埋もれてしまう。2度ほど真剣にはぐれそうになった。携帯を持たない私達、かなり危険だ。普段のフリーマーケットなどでは、私が好き勝手見てまわっていても彼が見ていてくれるのではぐれる事は無い。しかしこの日ばかりは違った。それほどまでに何かに夢中になっている彼を見るのは、なんだか嬉しい。
会場で目を引いたのが、ピンストライパーによる生の仕事風景。ショーで仕事を依頼され、その場で車にピンストを施していた。真剣なその姿は、近寄りがたくしかもカッコイイ。線で描かれるその模様に見入ってしまった。
「わー、綺麗!どうやってペイントしてんの?」
オレンジ色の車の前で私はそのペイントに釘付けとなった。ほわん、と可愛い花柄の模様。
「レース当てて、吹き付けて塗装してんねんでぇ、きれいやなー。」
楽しそうな彼、何でも答えてくれる。周りを見渡すと、そんな生き生きとした車好きばかりだ。皆目的は1つ、車がホントに好きなのだ。
こんな楽しい1日は、あっという間に過ぎていく。最後は後ろ髪を引かれる思いで会場を後にした。なんといっても4時間もかかるのだ。日に焼けてほてった肌が心地良い。まだ夢心地。山を越え、谷を超えて、まるで違う国に迷い込んだような錯覚だった。今日、今、あの町はひっそりとあの土地に存在しているのだろうか。
6月3日 00:44
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