人種のルツボでカリフォルニア生活 -14ページ目

聖パトリックの日

 今日は緑に溢れた1日。3月17日の今日はSt.Patrick’s Day。なにか緑の物を身に付ける日なのである。

 いつものドーナツ屋さんに行くと、今までに無かった緑色で飾られたドーナツを発見した。「今日だけのスペシャルだね。」と言う私にオーナーのダラは自分の赤いお店のユニフォームを指し「緑が無いからドーナツで作ってみたの。」と自慢げ。残るはたった3つ。フィアンセと2人分買う事にした。

 そもそもこの聖パトリックとは5世紀中頃からアイルランドで約300もの教会を設立しキリスト教の布教につとめた人物なのである。亡くなったこの日、彼を忍び追悼の日としてアイルランドで始まった宗教的な祭日なのである。

 時は西暦1737年頃。主食であるジャガイモの飢饉にみまわれたアイルランド人達は国を離れアメリカのボストンに定住していた。彼らの母国アイルランドのシンボルカラーであったグリーンの物を身につけお祝いをしたのがアメリカでの始まりと言われている。

 さて、バスの中や行き交う人を見てみると様々な形で緑の物を身に付けている。1番多いのは緑の服、次はシンボルでもある3ッ葉のクローバーのバッジなどである。子供からお年寄り、年齢問わずこの日を楽しみアイリッシュ料理を食べたリ、夜はパブなどで緑のビールを飲んでお祭り騒ぎ。宗教的な感じが全く感じられないのが現代の聖パトリックの日となっている。

ちなみに3ッ葉のクローバーは「精霊」「神」「キリスト」三位一体という意味があるらしい。

 この日にはあるルールがある。それは“緑の物を身に付けていないとつねられる”というものである。その理由が分からない私はドーナツ屋さんで一緒になったクローバーのバッジを付けた老夫婦に尋ねてみる事にした。「さあ・・・なんでかなー。昔からそうっだったわねー。」結局分からずじまいだった。

 
        3月17日 23:59

あの頃の私

 ロサンゼルス郊外のとある町で見つけた安アパート。大通りに面しプールを囲むようにして建つ2階建ての白くて可愛い地中海風の建物である。ここにテレビを備え付けいよいよ新生活という日。初めてその画面が映し出した物それはあの悲しい事件、ダイアナ元王妃の事故のニュースだった。

 2階に住んでいた私、玄関を開けるとすぐ下にプールが広がり目の前が下へと続く階段までの通路になっていた。その階段横、私の部屋のちょうど斜め前に部屋のライトがいつも赤、というちょっと変わったおじさんが住んでいた。夕方になるとお酒を飲み扉を開けて近所の人と楽しくやっている。つたない英語の私にも優しく、常にナイスなこのおじさん。ある日を境に姿を消した。私はこんなに目と鼻の先に居て引っ越しているところを全く見ていない・・・。しばらく経ってその部屋の窓ガラスに張られていた物。WARNING、そして何か下に書いてあったが辞書を目の前で引く勇気が無く内容は不明。ただ法的な力が動いている事は分かった。本当はおじさんはどんな人だったんだろう。

 ある日家に帰ってくるとアパートの前にパトカーが止まっていた。私がその横を通ると中のポリスが私に「早く部屋に入りなさい。銃を持った男がうろついてるぞ。」「・・・・」さすがアメリカ、想像通り危険な国だ。

 夜、ふと外が騒がしくベッドルームの窓を開け外を見た。大通りの向こう側に建つデニーズ が光に包まれている。空を見上げると警察のヘリコプター。そこからサーチライトで照らし出された光だった。急いでニュースにテレビのチャンネルを変えると神妙な表情のリポーターの顔。デニーズに強盗が入ったと言っている。すぐそこのだ。結局お金を盗んで逃げた所を捕まえられたのだが、こんなに色々身近で危険な事ってあるもんなんだな。

 夕方、アパートに帰ってくると私の部屋へと続く階段の上の所に立ち入り禁止の黄色いテープが張られていた。右手の方を見上げると玄関の扉が開いた部屋の前にシェリフ(郡で法の施行権限を持つ警察官)が数人何かやっている。その部屋は私の所から5つ隣、プールに沿ってカーブしているので私の部屋の窓から良く見えるのだ。私は思い切って階段を上がりテープの前で自分の部屋のドアを指し「ここ私の部屋。」と恐ろしい顔をしたシェリフに叫ぶと中の1人が顎で「入れ。」とやる。ところが部屋から様子を見ようにも入り口のシェリフが邪魔して中の様子が良く見えない。また外に出た私は下で集まっている住人達の所へ降りて行き何事かと尋ねてみた。何てことだ・・・。このアパートのオーナーが部屋の一室でマリファナを大量に育てていたというのだ。信じられない・・・・。 

 車に乗ったら信号待ちでも襲われない用まず全てロック。すぐ隣の市なのに危険で行けない町もあり、アパートの周りでも行かない方が良い通りも何本かあった。アジア人学生が近くのスーパーマーケットで撃たれた事さえあった。しかし渡米間も無い私はそれが普通で、アメリカはそういう国なのだと2年近くもその中での暮らしを続けていたのだ。

 オレンジ郡に移り住んでからというもの色々と周りが見えるようになり、あの時の暮しがなんとも危険だったという事に気付かされる。ここはあの時の危険さは感じられずバスで生活していても何ら危ないことは無い。あの生活があったからこそ、安全な場所とはどういう所なのか分かるようになった気がする。
 

          3月16日 23:58

ホームレス

 あるホームレスは200ドルもの大金を1日して手に入れるという。クリスチャンが多いアメリカ。彼らの恩恵を受けつつホームレス達は日々生き抜いている。

 朝バス停で待っていると向こうの横断歩道を遠くからふらふらとやって来る2人。今日で何回目だろう、またあの2人だ。40代前後のホームレスカップルである。毛糸の帽子にマフラーと真冬の出で立ちだが少しだけおしゃれな感じもしないではない。このバス停がガソリンスタンドの目の前と言う事もあって人の出入りが激しく、彼らの絶好のテリトリーとなっているようだ。

 彼らに気を取られていると「1ドルくれませんか。」突然背後から声がした。驚いて振り向くと、そこにはまだ20歳そこそこの金髪青年。しかしすでに風貌は一人前のホームレスだった。「ごめんなさい。持ってないです。」という私に興味なさそうにその場を離れ、仲間らしきもう1人の青年の所へと歩いていった。皆まだまだ若いんだ。どんな仕事だってお金に変える方法があるじゃない。口には出さない物の、つい言いたくなってしまった。

 ところでこの若者ホームレス達の行く先、そこには横断歩道を渡ってきた先程のホームレスカップルが。以前、他のホームレス達の激しいテリトリー争いを目の当たりにした事がある私は彼らの行く末が少し心配になった。「どうだい、お前ら。」「はは、良くないですねー。」何の事は無い、テリトリーを時間差でシェアしているようだ。

 入れ違いにやって来たこのカップル。彼女の方と目が合ってしまった・・・。「1ドルちょうだい。」

 前回始めてそう聞かれた時の事。「ごめんね。」と優しく断る私の後に同じく聞かれた白人女性、「あんたもちゃんと働きなさい!私は今から仕事に行くのよ!」とサングラスの奥の目を光らせ周りの心を代弁してくれた。するとそれまでナイスだったホームレス達が豹変。この女性を罵り、わめきながら向こうの方へと離れていったのだ。怖すぎる・・・。

 さて今回また聞かれた私。ここは穏便に刺激せず、でも「働きなョ」と強く思いながら「またごめんね。」と笑顔でしっかり否定。彼女は気にする事無く彼氏の方へと歩いていった。よかった。そしてガソリンを入れていたおじさんが私の次に聞かれた。彼は何やら財布をゴソゴソ。よく見ると彼の車のバックミラーには、キラキラと輝くクロスのロザリオがしっかりとぶら下がっていた。


          3月15日 23:52

存在しないホワイトデー

 昨日手に入れたブドウを食べながらふと思う。赤いブドウに白いブドウ。赤のバレンタインに白のホワイトデー・・・。

 3月14日。日本ではホワイトデーという心ときめく日が存在する。しかし、アメリカではこの日、普通の日と何ら変わる事無く過ぎ去っていく。

 そもそもアメリカ、バレンタインデーの風習からして日本のそれとは180度も違う。愛する人達に感謝する日であり、そのほとんどが男性から女性にプレゼントを贈る日であるのだ。贈り物にはカード、花、ケーキ、チョコレートなどが定番である。その中でも赤いバラが基本中の基本。赤いバラ以外の花を選択をする人はまだまだ少ないらしい。ちなみにアメリカ男性が贈る花束の値段、全米平均65ドルである。

 赤いブドウに爪楊枝を刺しながらふと思い出した。今日も帰りのバスで会ったあの中南米カップルのバレンタインデーの日の事を。

 彼らを見かけるようになったのはもう1年近く前の事になる。私より後のバス停から乗り込んでくる彼ら、2人がよそよそしかったはじめの頃が懐かしく今では決まってお別れのキス。いつのまにか恋人同士になっていた。しかし彼女だけの薬指には既に結婚指輪が。そして2人が降りるバス停は違う。色々と彼らの関係を詮索してしまうが、バレンタインデーの日の彼女の幸せそうな顔が忘れられない。

 あの日、いつものようにバスの窓から彼らがバス停で待っているのが見えた。最初に乗りこんだ彼女。彼女は両手で1本の大きな深紅のバラを大事そうに胸の前で抱え、いつもより少し派手なお化粧をした顔に満面の笑顔をうかべていた。彼も照れくさそうに彼女の横へ腰を下ろし、いつまでも幸せそうに微笑んでいた。


 ・・・・・モグモグ。それにしてもこのブドウ、甘くておいしい。



        3月15日 00:32

フリーマーケット

フィアンセと2人、近くの短期大学の駐車場で毎週土曜日、日曜日に行われているフリーマーケットに行ってきた。約300ものブースで売られている様々な生活用品、家電、おもちゃ、アンティーク、靴屋、果物など挙げたらきりが無い。

 中には刀屋さんもあった。ポリバケツに色々な国の刀がいくつも刺さっていた。日本のお土産で売っているような刀まである。お客に囲まれ「これが良いんだよー」と刀を掲げて自慢げなお店のオーナー。中東系のこのおじさん、ある意味リアルだ。

 そしてフィアンセが趣味で集めているミニカーのお店を発見。だが彼の探している物はそのお店には置いていなかった。そこへ奥からひょいっと顔を現した店の白人オーナー、彼の名はボブ。ボブが「何探してるんだ。」と彼にたずねた事から始まり「あれ知ってるか、こんなミニカー知ってるか」とお互いどれだけコレクターであるか腹の探りあいである。そして最後には意気投合。お店に持って来ていない商品がまだまだ有るらしく、これからは彼がメールで注文し、ここで取引をしてくれる事となった。お金で買えないコレクターとの大切な繋がりである。

 さて収穫はもう一つあった。果物屋さんで見つけたおいしそうなブドウ。皮付きのまま食べれて、マスカットのようなグリーンの物と赤い物それぞれ1パウンド(約453g)99セントである。味見をしてみるとなんとも美味。2種類を1房づつ持ってレジの所へ持っていくとお店の子が秤で重さをチェック。2.5パウンドくらいあったが「2ドルで良いよ」となんともナイスである。

 どんよりとした曇り空の1日。私達の心はぽかぽか暖かい。


          3月13日 22:28