バスの中の子供達
やっとブドウがその実を赤く染める準備が出来始めた、6月も終わり。子供達の、長い長い夏休みがほんの少し始ったばかり。
いつも空いてたはずのバスが、最近では子供達でおおいに賑わっている。母親とショッピングの子供達、サーフボードを抱えリュックを背負った少年達、綺麗にお化粧し話に夢中な大人びた高校生の女の子達、照れくさそうなダブルデートのグループ。どの顔にも、学校から開放されたような無邪気な笑顔がこぼれている。
今日、仕事帰りのバスの中。1番奥の席で意味なく大きな声でしゃべる、高校生風の悪ガキ3人組。スケートボードを床や座席に放り出し、まるで近づく人を威嚇するかのようだ。席がある程度埋まっていた為、私は仕方なく少年達の近くに腰をおろした。
3人の内、栗色のくせっ毛を少し伸ばした目の大きな少年は、とりとめの無い話しをあーだこーだと大きな声で話し続ける。サラサラの金髪を肩まで伸ばした色の白い少年は、それに意見をぶつけては大笑いしたり、けなしたり。短い金髪に、ソバカスだらけの顔のぽっちゃりした少年は、ニコニコとそんな2人に相槌をうっている。仕事に疲れた大人達はそんな雑音の中で、静かにぐったりとシートに体を埋もれさせている。
―― ピピピピッ
携帯が鳴った。どうやら長い金髪の少年にかかってきたようだ。
「あ、ハイ、マム。うん、今バスの中。・・・うん、うん。分かってるよ。もうすぐ家に着くから。うん、うん。バイ。」
突然の母親からの電話で、さっきまでの勢いを無くした少年を、栗色の髪の毛の少年がからかう。それを受けて、また彼らはいっそう騒々しくなった。
左手にはオレンジ色の夕日。それを横顔に浴びながら何気に思い出す。無邪気でいられた子供の頃の事。友達の事。大人になる前の事。
6月29日 01:05
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