命をかけた国境越え | 人種のルツボでカリフォルニア生活

命をかけた国境越え

 .。* ゚ + 。・アメリカ南西部の国境付近でメキシコ人12名の遺体が見つかった。そこは40℃を軽く超す砂漠地帯。彼らはアメリカンドリームを掴むべく、メキシコから歩いて渡ってきたのだ。国境を超え、アメリカの地にたどり着いたというのに・・・・・猛暑の中、彼らは生き残るすべも無く力尽きてしまった。 .。* ゚ + 。・

        5.26.05

  2月に紹介したメキシコ人のフェリックス(関連記事 )の従兄弟にフーベンティーノがいる。彼とはかれこれ4年もの間いい友達だ。26歳にして2児のパパである。実は彼、アメリカに渡ってきたのは正規のルートではない。というのもアメリカに不法入国させる為のエージェントが存在するのだ。これはとてもポピュラーな事で、現在では約2000ドルがその価格となっている。入国の手段は色々とあり、フーベンは車でやって来た。エージェントの運転する車で、お父さんと、奥さんとの3人で堂々と入国したのだ。心臓が飛び出るほど怖かった、と今では笑って話す彼、20歳の出来事である。今ではフーベンと彼のお父さんを大黒柱とし、彼らの家族をメキシコから呼び寄せ、20人ほどの大家族で暮している。またつい最近では、彼の友達が奥さんと子供を国に残し、命をかけ川を渡ってやって来たらしい。とにとにかく、メキシコ人の不法入国は現在大きな社会問題となっている。

 しかし、なぜ彼らはそこまでしてアメリカに渡ってくるのだろう。それをフーベンにぶつけた事がある。その答えは私を愕然とさせた。メキシコの田舎に住む彼らの国での生活費、驚く事に1ヶ月僅か150ドルほどで大人1人暮していけるというのだ。その為、多くのメキシコ人達は虐げらながらアメリカで在り付いた仕事に精一杯従事し、家族に送金をし、そして数年の間でお金をしっかり作り、国へ帰っていくそうである。2年で大きな家を建てたフェリックスがいい例である。

 そしてフーベンも後数年で国へ帰ると言った。息子がもう小学校へ上がる頃である。収入の為、アメリカでレベルの低い学校へ行かせるよりも、メキシコで立派な学校の教育を受けさせたいと考えていると言う。



 そういえば1年程前、フィアンセと車でテキサスまで向かう途中の事。太陽が昇り、徐々に辺りが明るくなる早朝、、ニューメキシコ州のとある町に立ち寄った。その町の名はEL PASO (エルパソ) 。ここはメキシコに接した小さな町である。夜通しのドライブに疲れた私達は、休憩の為にフリーウェイ沿いのマクドナルドに寄ることにした。そこで目の当たりにした光景、それは多くのラテン系の人々と、多くの白人ホームレス達。汚れた英語とスペイン語の洪水だった。彼らはアジア人の私達を見るや否や、興味深そうな目で見据えてくる。カリフォルニアのあの陽気なメキシコ人はここには居ない。もしかして、ここは、渡ってくるメキシコ人達の最初にたどり着く町なのかもしれない。

 テキサスの帰り道、エルパソの町を通ったのは夜だった。そして分かったメキシコとの距離。見えているのだ。ベルト状に暗闇の平原が広がる向こう側、こうこうとメキシコの町の光がここまで届いている。もう直ぐそこに。メキシコ側からもきっと、この町の明かりを複雑な気持ちで同じように誰かが見つめている事だろう。今にも賑やかなメキシコ音楽が空を伝って聞こえてきそうだった。


                 5月26日 00:26



                               
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