ニコール
バスに乗りこむと、1番奥の座席にニコール(関連記事
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「ハイ!ニコール。」
私はそう彼女に声をかけ、空いている隣に座った。CDの音楽をヘッドホンで聞いていた彼女はそれを首にずらし、それから私達は他愛も無い話で盛り上がっていた。
「今日は髪、赤くないね。」
私が言うと、彼女は声をたてて笑った。と言うのも昨日、彼女の金髪の所々が赤く染まっていたのだ。退屈な授業の時に、髪の毛に水性ペンで友達と色を塗って遊んでいたらしい。それにしても髪に色を塗る、黒髪を持つ日本人の私には発想すらしなかった事である。
ふと、ニコールの首にかけたヘッドホンから軽快なリズムが漏れ聞こえている事に気付いた。
「何聞いてるの?」
そう訪ねた私にニコールはニヤリと意味ありげな笑顔を私に向け、
「聞いてみる?」
と、ヘッドホンをよこしてきた。(なんだろう)と、私はそっとそれを自分の右の耳にあててみた。
♪.。* ゚ + 。・゚・思いでは いつも・・・・・・.。* ゚ + 。・゚・♪
「え??日本語じゃん!!」
そう、それはまぎれも無く日本語の曲、私もよく知っているメロディー。タイトルは分からないが、JUDY AND MARY の懐かしい昔の曲だ。そして、その英語バージョンも聞かせてくれた。そしてニコールは「今1番好きな歌手」と言って次の曲に飛ばした。それはまたしてもよく知った昔の曲。
「T.M.REVORUTION 、彼が1番ね☆こうやって聞きながら、少しでも日本語の勉強になればと思って。でも難しいー。」
そうなのだ、ニコールは日本に行きたくてしょうがない。そしてマンガから日本を感じ、音楽で日本を感じている。それはアメリカに渡る前の自分もそうだった。ハリウッド映画や音楽にふれ、アメリカを感じていたあの頃。なんだかニコールがあの時の自分に少し重なって見えた。
5月19日 00:25